【芸術分野】
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「音楽で感情をコントロールできる?!」
~108名のデータから探る「感情コントロール」の可能性~
「映画のシーンでなぜか涙が溢れる」「アップテンポな曲を聴くと足取りが軽くなる」。私たちは日頃、無意識のうちに音楽によって感情を動かされています。本研究に取り組んだ生徒たちは、この「音楽と感情」の相関関係に着目。特定の楽曲が人々に共通の感情を抱かせるのか、という問いに対し、100名を超える大規模なアンケート調査とデータ分析を通じて、その深層に迫りました。
単なる個人の感想に留まらず、統計的なアプローチで音楽の「機能」を解明しようとした探究のプロセスを紹介します。
1. 仮説の立案:メロディが感情を規定するという予感
生徒たちはまず、音楽の三大要素(リズム・メロディ・ハーモニー)が脳に与える影響について分析しました。「短調の曲は悲しく、長調の曲は明るく感じる」といった一般的な通説が、果たしてどこまで普遍的なものなのか。もし、特定の音楽を聴かせることで集団の感情を一定方向に導けるのであれば、それは「音楽による感情のコントロール」が可能であることを意味します。彼らは、音楽には人々の心のベクトルを揃える「強制力」があるのではないかという仮説を立て、検証を開始しました。
2. 問いの深化:108名の聴取データが示す「一致」と「差異」
1年生の音楽選択者108名を対象に行われた実証実験では、クラシックの名曲を用いて、聴取後に生じる感情を詳細にサンプリングしました。
実験の展開: ベートーヴェンの『交響曲第7番』やドヴォルザークの『新世界より』など、性質の異なる楽曲を提示。直感的に想起された感情を多角的な選択肢から回答させました。
データの可視化: ベートーヴェンの楽曲では約9割が「喜・楽」を感じた一方で、『新世界より』第4楽章では約9割が「恐怖」を感じるという、驚くほど高い一致率を記録。メロディの構造が、個人の経験を超えて共通の心理的反応を引き起こす強力なエビデンスを提示しました。
3. 探究の到達点:コントロールの限界と「感性の多様性」
膨大なデータ検証を経て、生徒たちは「音楽によって大まかな感情の方向性を操作することは可能である」と結論づけました。
しかし、生徒たちの探究はそこでは終わりませんでした。「怒り」や「恐怖」といった大きなカテゴリーでは一致を見せるものの、言葉の細かなニュアンスや、その背景にある「なぜそう感じたか」という主観においては、個々人の感性が色濃く反映されることも突き止めたのです。
「音楽で心を完全に支配することはできない。しかし、人々の心を特定の方向へ向かわせる強力な『鍵』にはなり得る」。自分たちの手で集めたデータをもとに、芸術と科学の境界線を丁寧に紐解いた、非常に洞察の深い発表となりました。