9月「人権を確かめ合う日」ヒューマンハート特別企画 みんなの声~
「大丈夫」が沈んだ日。高田高生が考える、災害時の孤立と「つながり」の力~
9月「人権を確かめ合う日」ヒューマンハート特別企画 みんなの声~
「大丈夫」が沈んだ日。高田高生が考える、災害時の孤立と「つながり」の力~
~ヒューマンハート委員会からの問い~
もしあなたが「帰れない夜」に一人で取り残されたら、あなたは何を頼りにし、どんな行動をとると思いますか?
9月「人権を確かめ合う日」ヒューマンハート特別企画 みんなの声
~「大丈夫」が沈んだ日。高田高生が考える、災害時の孤立と「つながり」の力~
高田高校が大切にしている「和敬」の精神。互いに心を開き、敬い合う心は、いつもの街が水に沈み、日常の「大丈夫」が突然奪われてしまうような不測の事態において、どのような支えになるのでしょうか。
9月のヒューマンハート特別企画『帰れない夜。』で実施したアンケートには、800件近い回答が寄せられました。そのうち約500件には自由記述もあり、生徒たちの真摯な思いとリアルな実感が数多く綴られていました。
データの背景
「家族とのつながり」への強い思いと、見えない孤立への不安
「もしあなたが『帰れない夜』に一人で取り残されたら?」という問いに対し、高田高生たちが何を頼り、どのように行動しようと考えるのかが、数字として表れました。
1.家族や知人に状況を伝え、連絡を取りながらどうするか考える:58.3%
何よりもまず、家族や身近な人とつながり、お互いの状況を確認したいという回答が過半数を占めました。
2.無理に動かず、駅など人のいる安全な場所で状況が落ち着くのを待つ:19.1%
二次災害の危険を考え、人のいる場所にとどまるという慎重な選択です。
3.運行情報や災害情報を確認し、自分で安全な場所や行動を判断する:10.0%
自分で情報を集め、状況を判断しながら行動しようとする選択です。
4.駅員や周囲の人に声をかけ、情報を聞いたり、助けを求めたりする:8.6%
見知らぬ他者や大人を頼るという選択です。いざという時に周囲へSOSを出すことの難しさも見えてきます。
5.不安や心細さで、何をすればよいかすぐには判断できないと思う:3.8%
突然の非日常に直面し、すぐには行動を決められないという率直な思いも寄せられました。
このほか、選択肢のどれか一つではなく、
「家族に連絡だけし、スマホをあまり使わず、駅で流れる災害などのアナウンスを聞きながら待機する」
など、複数の行動を組み合わせて考える回答もありました。
分析のポイント
回答の約6割が、「まず家族や知人と連絡を取る」ことを最初の行動として選びました。非常時には、安全な場所や情報だけでなく、「信頼できる誰かとつながっている」ことそのものが、大きな安心につながっていることがうかがえます。
一方で、見知らぬ他者に助けを求めることを最初の行動として選んだ回答は8.6%でした。
この数字の背景には、どのような思いがあるのでしょうか。
自由記述を読み進めると、数字だけでは見えなかったさまざまな葛藤が浮かび上がってきました。
みんなのリアルな葛藤
― 自由記述507件より ―
1.信頼できる誰かと「つながっている」安心
「精神の状態も不安定になると思うので、家族や知人と連絡をとることによって、不安を和らげるため。」
「家族や知人とお互いの安全確認ができ、相手の状況を知れることで少し安心できる。」
「家族と繋がるだけで安心できるから。」
家族や知人に連絡するのは、迎えに来てもらうためだけではありません。
自分のことを知っている誰かとつながっている。そのこと自体が安心になる。
多くの回答から、家族や身近な人とのつながりが、みんなの「大丈夫」を支えていることが見えてきました。
2.「つながれる」という安心と、それを支える備え
「下手に動けば余計に危ないし、スマホがあれば、情報を逐一手に入れられるし、家族とも連絡が取れるので、スマホが充電された状態で残っていれば、とどまっていても少しは安心できそうだからです。」
「お母さんやお父さんを頼りたい。携帯がなければ公衆電話などあれば安心できる。」
「家族が一番情報を持ってると思ったから。携帯の充電と飲み物があれば安心できる。」
スマートフォンは、家族と連絡を取り、必要な情報を得るための大切な手段になっています。しかし、公衆電話を挙げた回答からも分かるように、大切なのはスマートフォンそのものではなく、「誰かと連絡が取れる」「必要な情報を得られる」ということなのかもしれません。
普段は意識することの少ない「つながれる環境」と、それを保つための備えも、私たちの安心を支えています。
3.一人ではなく、誰かと支え合いたい
「自分の命も大切だけど、家族や友人の命も大切なので、まず全員の安否を確認したいから。困っている人がいたら積極的に声をかけて、自分にできることは何かを考えて行動する」
「自分が落ち着いている状況なら声を掛け、できる範囲で助けると思う」
「周りにいる人に頼る。助け合いは大事。ポジティブな言葉があったら安心する」
「困っている人がいたら考えて助ける」
知らない人ばかりの場所であっても、「一人ではない」ことを安心につなげようとする声や、自分も誰かの力になりたいという声が寄せられました。
支えてもらいたいという思いと、誰かを支えたいという思い。
非常時だからこそ、その両方がみんなの中にあることが分かります。
4.「助けたい」と思っても、余裕があるとは限らない
「急に起こったことで頭の整理が追いつかないと思ったから。声はかけられないと思う。自分のことでいっぱいいっぱいになると思うから。でも周りのこともちゃんと見て正しい判断ができる人でありたいと思う。」
「困っている人を見かけたら助けになりたいが、自分のことでいっぱいになり、声をかけることができないと思う。」
「すぐに自分にとって嫌な状況を考えてしまう癖のせいで冷静に動けないと思ったから。友人がひとりでもいたら少しは冷静に動けると思う。でも自分に余裕がない限り周りの人を助けようという考えも浮かばないと思う。」
「家族や人とつながっているという安心感があるだけで、不安な気持ちが少し和らぐと思うから。自分のことで精一杯で、声をかけられる自信はない。」
「以前電車が遅延した際には、一番に母親に連絡したから。声をかけられるとは思わない。きっと自分のことで手一杯で、まわりなど気にしている余裕はないだろうから。」
困っている人を助けたいという気持ちがあっても、自分自身も不安や混乱の中にいれば、周囲を見る余裕を失ってしまうことがあります。
「助けたい」という思いと、実際に行動できるかどうかは同じではない。
それでも、「周りのこともちゃんと見られる人でありたい」という思いも、生徒自身の言葉の中にありました。
5.「声をかけたい」と「声をかけられる」の間
「声をかけたいけれど、実際その場面になったらかけれなくなると思います。」
「同い年ぐらいの人だったら声をかけられるかも?」
「2人きりなら声をかけるけど、人が多い中なら声はかけられないと思う。」
「もし近くに同じように困っている人がいても、違ったらどうしよう。困ってなかったら声かけるのも迷惑かな、という思いに阻まれて、声をかけることができないと思う。」
同じ「声をかける」という行動でも、相手の年齢や周囲の状況によって、そのハードルは変わります。
さらに、
「本当に困っているのだろうか」
「声をかけたら迷惑ではないだろうか」
という迷いもあります。
「助けたい」という気持ちが、そのまま行動につながるとは限らない。
生徒たちの声からは、その間にあるさまざまな「ためらい」が見えてきました。
6.支援の届きやすさは、誰にとっても同じではない
「スマホの充電がなくなると不安だなと思うし、旅行とかで海外から来ていた人は言語もわからない中でパニックになるだろうなと思った。」
「子どもがお母さんがいなくて泣いていたりしたら助けにいける気がする。おじいちゃんおばあちゃんがコケたりしててもいけると思う。ただ、自分のことでいっぱいいっぱいになってるかもしれない。」
自分自身が困った場面を考える中で、言葉が通じにくい人や、一人で対応することが難しい子ども、高齢者など、自分とは異なる状況に置かれた人へ視点を広げた回答もありました。
同じ場所で、同じ災害に遭っていても、困り方は同じではありません。
情報を得られるか。
誰かに状況を伝えられるか。
自分から「助けて」と言えるか。
その難しさは、人によって違います。
「困っているなら、自分から助けを求めればいい」―そう簡単には言えない。
自分の困りごとだけでなく、自分よりさらに支援につながりにくい人へと視点を広げた意見も寄せられました。
不確かな状況の中で、どう支え合うのか
『帰れない夜。』に直面したとき、交通機関や通信手段など、私たちが普段「あって当たり前」だと思っているものが、突然使えなくなることがあります。
今回の回答から見えてきたのは、単に「災害のときにどう行動するか」だけではありませんでした。
・家族とのつながりが安心になること。
・誰かに助けを求めることには勇気がいること。
・助けたいと思っていても、自分に余裕がなければ行動できないこと。
・そして、同じ状況にいても、支援につながる難しさは人によって違うこと。
そこには、「孤立しないこと」「助けを求められること」「周囲が困りごとに気づくこと」という、人権にかかわる大切な課題があります。
だからこそ、私たちは次のような視点を大切にしていきたいと考えています。
〇自分の日常が、多くの人やものに支えられていることに気づくこと
〇困ったときには一人で抱え込まず、信頼できる人や周囲に助けを求めること
〇「助けて」と言えない人もいることを想像し、必要なときには「大丈夫ですか?」と声をかけること
「自分で判断できる人になりたい」という声も寄せられました。自分を守ることは大切です。 その一方で、私たちは誰かに支えてもらうこともあれば、誰かの支えになることもあります。
高田高校では、今回の『帰れない夜。』をきっかけに、一人で何とかすることだけではなく、困ったときに誰かを頼ること、そして困っている誰かに気づくことについて、これからも考えていきたいと思います。
高田高校が大切にしている「和敬」の精神を、日常の中でどのように形にしていけるのか。
誰もが孤立せず、「大丈夫?」と言える学校を、みんなでつくっていきたいと思います。